ベッドから車いすなどへ乗り移る際に行う「移乗介助」は、日常生活の中で繰り返し行う介助の一つです。
移乗介助では、介助される方の体重を受け止める必要があるため、腰を痛めてしまったり、タイミングが合わず事故の危険を感じたり、といった経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、安全に移乗介助を行うために知っておくべき介護の技術「ボディメカニクス」についてご紹介します。
介護の技術「ボディメカニクス」とは
ボディメカニクスとは、身体に負担をかけない介護技術のことです。
これを意識して移乗介助を行うと、介護される側はもちろん、介護する側の身体の負担も軽くなるのです。
知識として持っておけば、介護に限らず日常生活の中でも役立つ場面が出てくるでしょう。
それでは、ボディメカニクスの7つの原理を解説します。
①支持基底面を広くとり重心を低くする
支持基底面とは、床に接している足裏部分をつないでできる底面積のことです。
前後左右に足を広げて基底面を広くとると、介助者の身体が安定し、移乗時の負担を軽くすることができます。
このとき、重心を低くすることで、さらに身体の安定感が高まります。
②お互いの重心を近づける
介助者と介助される方、お互いの重心を近づけた状態で移乗すると、身体がぶれないため安定感が生まれます。
身体が密着することで最小限の力で移乗ができるので、介助者が腰を痛める可能性も減らすことができるでしょう。
③足・腰・背中など身体全体を利用する
移乗時には、介助される方の全体重を支えることになります。
そのため、手先や腕に力を入れてしまうと、介助者がケガをしてしまう可能性が高まります。
介助する際には、足や腰、背中など大きな筋肉を使って身体全体を利用することを心がけましょう。
④介助される方の身体をできるだけ小さくまとめる
移乗介助を行う際には、介助される方の身体をできる限り丸めると、持ち上げやすくなります。
ベッドの上で、可能な範囲で腕や膝を曲げてもらうのがコツです。
このとき、介助者は必ず声をかけながら、身体を曲げる動作をサポートしましょう。
⑤てこの原理を利用する
移乗する際は、ベッドで寝ている状態から、てこの原理を利用し、最小限の力で介助される方の身体を起こします。
介助される方の膝や肘を支点とし、遠心力を利用することで、自分より身体が大きい介助者であっても、スムーズに起こすことができるのです。
⑥水平方向に移動する
全体重を持ち上げる動きは、介助者にとっても介助される方にとっても大きな負担になります。
しかし、水平に動かすのであれば、腰への負担も軽くなるのです。
移乗介助を行う際には、前もってベッドと車いすの高さを同じに調整しておくとよいでしょう。
⑦「引く力」を意識する
移乗時には、自分と反対方向に押すのではなく、手前に引く力を意識的に利用しましょう。
押す力と引く力では、引く力の方が小さい力で済みます。
そのため、体重を支える動きを行う際には、引く力を使った方が身体を痛めにくいでしょう。
身体の負担をなるべく軽くすることを意識して移乗介助を行いましょう
今回は、体に負担をかけない介護の技術「ボディメカニクス」についてご紹介しました。
今回解説した原則を意識しながらの移乗介助は、介助者はもちろん、介助される方の負担軽減にもつながります。
介護職の方や家族の介護を行っている方は、ぜひボディメカニクスの原則を移乗介助に取り入れてみてはいかがでしょうか。